会長就任ご挨拶
一般社団法人特殊鋼倶楽部
会長 福田 和久
2025年6月の一般社団法人特殊鋼倶楽部の定時総会・理事会において前任の清水大同特殊鋼株式会社社長の後を受け、第19代会長に選任されました山陽特殊製鋼株式会社の福田和久です。
特殊鋼倶楽部は、1952年(昭和27年)5月16日に特殊鋼専業メーカーと専業問屋との業界発展のための交流の場として任意団体でスタートしましたが、時代を経ると共に、メーカーでは特殊鋼専業に加えて高炉メーカー、流通業では総合商社も会員として加入し、1983年(昭和58年)には通商産業省から社団法人の認可を受けるに至りました。その後、2013年(平成25年)には内閣総理大臣から一般社団法人への移行が認可され、現在に至っております。現時点では、会員はメーカー23社、流通業者100社という規模になっております。
さて最近の経済状況を振り返りますと、2020 年初頭から2023年前半まで続いた新型コロナウイルス感染症により世界経済は大きな影響を受けましたが、この感染症の収束後、日本経済は緩やかな回復が期待されているものの、力強さを欠く状況にあります。足元では、米国の通商をはじめとした各種政策の影響、特に相互関税導入がもたらす、世界の貿易・経済に対する不確実性の増大のほか、遅々として進まない中国の鉄鋼需給バランス改善、国内では人手不足による生産活動への影響など、多くのリスクが内在する、不安定で不確実な環境下にあります。
このような背景もあり、2024 年度の我が国の粗鋼生産量は8,295万トン(前年度比4.5%減)、特殊鋼の熱間圧延鋼材生産量は1,541万トン(前年度比3.3%減)となっております。(出所:経済産業省・日本鉄鋼連盟「生産統計」)
言うまでもなく特殊鋼は「最先端技術の粋」であり、「最新技術の融合体」であります。鉄鋼材料の中で独特の高い機能を有する材料であり、自動車をはじめとする輸送機器や産業機械、建設機械、工作機械等、幅広い産業分野の中核部品材料として使われております。また、家庭においてもキッチンや器具では広くステンレス鋼が使われるなど国民生活と密接な関わり合いを持つものであり、特殊鋼産業が人々の生活を支えているといっても過言ではありません。
しかしながら、特殊鋼業界は、需要面では国内市場の縮小・構造変化、供給面では、製造コストの増大、海外特殊鋼メーカーや他素材との競合激化など厳しい状況にあります。このため特殊鋼業界が更に発展を続けて行くためには、既存の製品分野の技術力・製品品質をさらに高度化することが大切でありますが、それに加え、これまで培って来た特殊鋼技術を核として、航空宇宙分野、海洋分野、エネルギー分野など今後も需要拡大が見込まれる領域に向けた研究開発、技術開発を推進することも極めて重要です。また将来の特殊鋼業界を支えるあらゆる分野での人材を確保・育成していくことも継続的に取り組んでいく必要があります。
特殊鋼業界を取り囲む厳しい社会経済環境に対処するため、製販一体の団体であるという特殊鋼倶楽部の特徴を最大限に活かしながら、メーカー会員・流通会員が連携・協力して、我が国特殊鋼産業の競争力の強化のために取り組んでいくことが必要と考えております。そのための基盤を提供すべく努力してまいりますので、関係各位のご支援・ご協力をお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。
(2025年6月12日)