HOME > お知らせ一覧
お知らせ

お知らせ一覧

一般社団法人特殊鋼倶楽部 樋口会長2021年新年挨拶

 

 

一般社団法人特殊鋼倶楽部
会 長  樋 口  眞 也

 

 

 2021年の年頭に当たり、新年のご挨拶を申し上げます。

 

 昨年は、コロナに始まり、コロナに終わった一年でした。

 

 特殊鋼業は、2019年度の下期から、米中貿易摩擦の影響などで厳しい状況にありましたが、そのような中で2020年に入りコロナ禍が広がり、需要が急減しました。2020年の特殊鋼の熱間圧延鋼材生産高は、12月22日に経済産業省が発表した鋼材需要見通しによれば、前年比24.1%減の1,457万トンと、2009年の1,327万トンに次ぐ低い水準となる見込みです。

 

 特に4-6月期は前年同期比4割以上の減少と大底になりました。7-9月期からは、自動車、建設機械などを中心に需要が回復してきましたが、店売りなど分野別に濃淡がある状況です。そのような中、市場価格はリーマンショック時に比べれば下がっておらず、皆様が「特殊鋼の本当の価値」の認知に努められた結果だと思います。

 

 特殊鋼流通業界におきましても、極めて厳しい年となりましたが、素晴らしい話がありました。全日本特殊鋼流通協会会長及び特殊鋼倶楽部副会長を3期6年にわたり務められた佐久間特殊鋼株式会社の佐久間貞介様が、2020年秋の叙勲を受章されました。特殊鋼業界へのご功績の賜物であり、同時に特殊鋼業界にとっても大変な栄誉と感じております。

 

 さて、今年も、コロナ次第の年となるでしょう。しかしながら、特殊鋼業界が産業、社会に貢献していくために挑戦すべき課題は明確になっていると思います。キーワードは、デジタル、グリーン、タフネスです。

 

 デジタルに関しましては、高炉メーカーでは、鉄鋼製造プロセスのIoT化、データインフラ整備、AIを含めたデータサイエンスなどの取り組みが進められています。また、会員各社におかれても、コロナ禍の対応として、管理部門では、テレワークやオンライン会議の活用により、業務の進め方を改革する機会となっていると思います。オンライン会議やデジタルツールを活用した新たな営業活動も進められており、提案型営業への変革が求められていくと思われます。特殊鋼倶楽部の会員は、メーカー、商社、問屋と業態や会社規模が異なっており、デジタルトランスフォーメーション(DX)タスクチームを立ち上げ対応している会社もあれば「DXとは何か」との会社もあるといった状況かと思います。このような状況を踏まえ、人材確保育成委員会において、まずは、「DXとは何か」、「会員の先行事例紹介」等の講演会を年度内に実施すべく検討を進めています。

 

 グリーンに関しましては、菅首相が、2050年脱炭素化社会の実現を目指すとの宣言を行われました。特殊鋼業界自身がこの実現に向けて努力していくとともに、需要産業への貢献を加速していく必要があります。市場開拓調査委員会では、「自動車産業における特殊鋼製品のサプライチェーンの変化に関する調査」を本年度実施しており、車の電動化やグローバル化の進展に伴うサプライチェーンの変化を調査中で、会員の皆様に役立つ情報提供を目指しております。また、広報誌「特殊鋼」2021年3月号では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)殿のご協力を得て、「水素社会実現に向けての活動と水素環境下で使われる特殊鋼の紹介」を特集予定です。

 

 タフネスに関しましては、日本の特殊鋼業は、幾多の試練を勝ち残って、生産量では30年間で3割増え、技術では世界一の水準を維持し、我が国製造業の競争力の根幹を支えてきた「しぶとい成長産業」です。コロナ禍により、これほどまでの試練を受けたのは歴史上初めてのことでありますが、国際競争力を有する顧客と力を合わせれば、今回の試練に耐え勝ち残ることができます。我々がやるべきことは変わっていないと思いますが、コロナ前に想定していた未来の変化はもっと手前に来るでしょう。我々が長年をかけて磨きをかけてきたもの、品質、開発力、提案力やそれら技術を中核とした顧客との信頼関係、これらの真価がこれまで以上に問われています。一方で、変化のスピードは今まで以上に加速し、それに迅速に柔軟に対応することがより必要となっています。

 

 材料工学の話に飛びますが、鋼において「強度(ストレングス)」と「靭性(タフネス)」は基本的には相反する特性です。しかしながら、結晶粒微細化という鋼の強化機構は、強度と靭性を共に向上させます。翻って、特殊鋼業において、厳しい競争環境を勝ち残るための最大の要素は、競争基盤としての強くてタフな現場です。「強さとタフネス」とは、結晶粒のように一人ひとりが、異なる角度、視点、立場で、自らの仕事を深く考えた上で、チーム特殊鋼の組織として連携して困難な課題や高い目標に取り組むことだと思います。

 

 さて、今年の干支は「辛丑(かのとうし)」です。痛みを伴う幕引きと大きな命の芽吹きを意味するそうです。コロナ禍からの回復は未だ道半ばですが、変革の必要性と危機感を持って課題に迅速に取り組み、「強さとタフネス」を高める1年にしようではありませんか!

 

 最後に皆様と特殊鋼倶楽部会員各社のますますのご発展を祈念いたしまして、私の新年の挨拶とさせて頂きます。

 


このページのトップへ